山岸 勝さん

 「農薬をまかないでください」
 昭和63年。1枚の田んぼに立てた1本の看板から、有機栽培が始まった。
 現在NPO魚沼ゆうきではJAS有機米の上をゆく、「じゅんかん米」を栽培する。「じゅんかん米」とは、農薬・化学資材、市販の有機肥料をいっさい使わず、自家製の食品堆肥のみで栽培する米。食品堆肥は、地元十日町の特産品であるそば店で、つゆをとったあとのかつおぶしを使用。一言に「有機肥料」といってもその中身はさまざまだが、これは人が食べられるものから作る安心できる有機肥料を使った、純粋な循環型だ。
 水にも細心の注意を払う。「とにかくいい水を使おうと、ダムから田んぼまでの間でトラブルが起こらないための防御策もとっています」。周囲から除草剤などの農薬や化学肥料の飛散、流入がないよう、栽培前には生産者同士が「覚え書き」を交わし、それを遵守して栽培したものが自然循環米として消費者に届けられている。
 雑草対策も自然の力で行う。田植え後10日以内、雑草が芽を出す前に、チェーンで土を攪拌する。カメムシ対策には畦にミントを植えるなど、それぞれの雑草や害虫の弱点を、自然の力で突いていく。自然を理解することが大前提だ。

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山岸 勝さん

左上)「イネの顔を見ながら作業を判断しています」と山岸さん
右上)スパルタの環境下でたくましい苗が育つ
下)田植えは6月上旬になることも

平成23年度農商工連携等による被災地等復興支援事業